クリニックBLOG

2016年10月14日 金曜日

気管虚脱(呼吸器疾患)

最近、病院に咳を主訴に来院されるワンちゃんが多いです。
ワンちゃんの発咳は主に心臓、肺、気管・気管支のいずれかに何らかの異常をきたしていることが原因として考えられます。

今回は、とくに気管の病気で気管虚脱という病気のお話です。
気管虚脱は中高齢以上の小型犬のワンちゃんに多く発症し、かなり強い発咳を特徴とします。
咳の音は、よくアヒルやガチョウの鳴き声「ガーガーッ」という音がするというように表現されます。
原因としては気管を形作る軟骨が弱って柔らかくなり、呼吸するたびに気管がつぶれてしまうため、咳を引き起こします。
また気管は呼吸した空気の通り道ですので、つぶれてしまうと空気を吸えなくなり呼吸困難を引き起こします。

ほとんどの症例が発咳の様子や、聴診、レントゲンのみで診断することができます。
症例1:次の写真は胸部気管虚脱の症例です。
   
写真で首から続く黒いラインが気管です。上は息を吸った時の写真です。首から胸の中まで一定の太さで気管が確認できます。
下の写真は息を吐いた時の写真です。矢印のあたりで気管が見えなくなっていることがわかると思います。この子は息を吐いたときに胸部の気管が虚脱してしまうタイプの気管虚脱です。

症例2:次に頚部(胸腔入口の)気管虚脱の症例です。
  
上の写真が息を吸ったとき、下の写真が息を吐いたときになります。今度は先ほどの症例とは逆で息を吸ったときに頚部から胸腔入り口の気管が虚脱して、息を吐いたときはしっかり気管が開いているのがわかると思います。
このように気管虚脱は虚脱をおこす部位によって、息を吸ったとき、吐いたときのどのタイミングで虚脱を起こすかが変わります。

気管虚脱は気管を支える気管軟骨の脆弱化や胸腔内の圧力が増すことにより引き起こされます。そのため胸腔内圧が増す原因を取り除くことで症状が軽減されることが十分に期待できます。
具体的には肥満の解消や気管の炎症を抑えること、あるいは咳そのものを鎮咳剤などで抑えることにより改善がみられます。

ただし虚脱の程度がひどすぎると呼吸困難を起こすため外科的な治療が必要となることがなります。
外科治療では気管の虚脱(つぶれ)を防ぐために気管の周囲に気管外プロテーゼというものを気管に巻き付けて矯正する方法、または気道内ステントというものを留置して矯正する方法があります。

今回、症例2では繰り返し失神を起こし、外科治療が必要と考えられた症例でした。まず状態安定のため気切チューブという気道を確保するためのチューブを設置し、抗炎症治療を開始しました。
 
2週間ほど気切チューブを留置し、抗炎症治療を継続したところ、全く咳がみられなくなったため、気切チューブを外してみたところ咳もほとんどなくなり、呼吸困難で失神を引き起こすこともなくなりました。
この症例では発咳により気管内の炎症が悪化し、呼吸困難を引き起こしていたと考えられました。そのため2週間、気切チューブにより虚脱を防ぎ、咳を抑えることによって炎症が治まり気管虚脱そのものも軽減されたものと考えられます。その後、3年ほど体重管理などを含め経過を診ていますが散発的に咳が起こる程度でほとんど内科療法も必要なく過ごすことができています。

気管虚脱では呼吸困難による失神を引き起こす病態であっても、炎症の管理、体重の管理などにより状態を安定化させることができる症例を経験することが多くなっています。

投稿者 くりの木動物病院

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