クリニックブログ

2017.03.02

猫の心臓病、肥大型心筋症について

猫ちゃんでも心臓病があることはご存知でしょうか。
実は、心臓病は猫ちゃんの死因第4位です。
(ちなみに第1位ガン、第2位腎不全、第3位猫伝染性腹膜炎…)
まあ猫も人も基本的な体の構造は同じなので、人が罹る病気が猫に発症しても不思議はないと言えますが、
やはり動物種によって発症しやすい病気は異なります。
猫の心臓病で最も多い病態が肥大型心筋症です。
肥大型心筋症が進行すると肺水腫による呼吸困難や血栓塞栓症を引き起こし、亡くなる子が多くなります。

肥大型心筋症といっても加齢とともに発症するもの、甲状腺機能亢進症などのホルモン疾患から続発性に発症するもの、
あるいは左室流出路障害(SAM)といった解剖学的な構造異常から発症するものと様々です。
最近では若い若齢の猫で急性心不全、肺水腫を引き起こして呼吸困難で病院に来院する子もいます。

症例①写真は肥大型心筋症から肺水腫を引き起こした3歳の雄の猫ちゃんの胸のレントゲン写真です。

VD像(仰向け) 

Lateral像(横向き)

矢印で示したところが拡張した心臓です。いわゆる典型的なバレンタインハートという形状を示しています。
肥大型心筋症の影響で肺水腫や軽度の胸水が貯留しており、またそのせいで心臓が見えにくくなっています。

肺水腫により呼吸困難症状がでているときは入院下での酸素化と投薬(利尿、強心)治療が必要となります。
次の写真は1週間の入院治療後のレントゲン写真です。
肺水腫が治ってきたので、上の写真と比較して心臓がくっきり見えるように、また心臓自体も小さくなっています。

 

症例②またさらに若い7ヶ月の猫ちゃんでも発症することがあります。
下の写真は、やはり肺水腫のせいで肺が真っ白になり、心臓などの陰影が見えなくなっています。


この子も急に発症し、飼い主さんが気づいた時には「血の混じったピンク色の液体を吐いて倒れていた。」とのことでした。
(肺水腫が進行すると肺から水があふれ出してピンク色の液体が出てくることがあります。この状況になるとかなり重篤です。)
またお腹のところに大きく黒く丸いものがみられますが、これは空気を含んだ胃です。
心臓病に限らず呼吸困難を起こした子は苦しいので、一生懸命空気を吸い込もうとして、空気を飲み込んで胃がこのように膨らんでいることが多くあります。

上の写真は入院治療後の写真ですが、肺水腫がひいて、心臓の陰影がしっかり見えています。

症例①、症例②の子はともに若く、その他に特別な病気をかかえていないため、治療に良く反応してくれましたので、現在は通院しながら投薬治療を続けています。
生活もほぼ通常通りの生活をおくれています。

しかしながら、肥大型心筋症は非常に怖い病気であり、早期発見がその後の予後を大きく左右します。
日常的に咳や運動不耐性(運動時にすぐ疲れる、息切れする)などの症状がみられた場合は心臓病の可能性もあります。