外耳炎について
外耳炎とは、耳に炎症が起こっている状態です。耳の入口から鼓膜まで及ぶ炎症もあり、放置していると鼓膜の奥の中耳や内耳に波及することがあります。炎症の程度によって症状は様々ですが、耳の痒みや耳の痛みが主な症状です。耳が痛いので犬が耳を触らせないように攻撃的になることがあります。また、首を振ったり足で耳を掻いたり、耳を下に傾けてみたりする動作が見られることがあります。耳垢も多くなり、耳から嫌なにおいが出て気付くことがあります。
外耳炎の症状
- 耳をかゆがるしぐさ
- 耳垂れが増える
- 黒い耳垢が出る
- 耳のあたりが臭い
- 頭、首をよく振る
- 無表情で沈鬱
外耳炎の原因
外耳炎の原因として最も多いのは、犬アトピー性皮膚炎、あるいは食物アレルギーです。
外耳炎を発症している犬のうち83%は犬アトピー性皮膚炎にかかっているといわれています。外耳炎の多くはアレルギーの体質に関係していますが、その他にも草や実などの異物からくるものや耳疥癬(耳ダニ)の感染によって発症することがあります。内分泌によるものや綿棒での耳の間違ったお手入れや免疫、体質、腫瘍、耳垢線と呼ばれる分泌腺の病気などあらゆる原因が考えられます。耳にはもともと耳の中を自浄化・自然治癒する『マイグレーション』という作用がありますが、様々な原因によって、その機能が失われてしまい、耳の中の環境が悪化して細菌などが繁殖し炎症を起こします。外耳炎はオトスコープを用いて丁寧に耳の中を観察して状態を調べることが大切です。
外耳炎の検査・治療
様々な原因で外耳炎を発症します。そのため検査ではオトスコープで耳の中を丁寧に観察するほか、細胞診と呼ばれる耳垢の検査が必要です。これらの検査で外耳炎の原因を特定し、適切な治療を行っていきます。慢性化してしまった外耳炎では、耳の中の汚れの中に細菌や真菌が繁殖しています。それらを退治し汚れを洗い流して清潔を保つことが大切です。外耳炎は定期的な検診により早期発見・治療が可能です。
外耳道に異物が入りこむ
散歩などで草むらに入った時に、植物の種や虫などの異物が耳に入り込むと、そこから炎症を起こす恐れがあります。外耳道が赤く腫れたり鼓膜が破れてしまうこともあります。異物が入り込むことで中耳炎や外耳炎を発症することもあります。炎症が広がると犬が首を横に振ったり片方の耳を下に傾けるしぐさをします。
虫や植物の種以外で一番多い原因は体の被毛です。被毛が耳に入り込み鼓膜を刺激したり刺さったり、炎症を引き起こします。
特にバグやフレンチブルドッグなどの短頭種に多くみられます。首を振ったり頭を傾けたりするしぐさを頻繁にするようでしたら一度当院にご相談ください。
このようなしぐさがあったらクリニックを受診しましょう
- 耳をかゆがるしぐさが増える
- 耳を痛がる
- 頭をよく振る
- 耳の周辺を掻くしぐさが増える
- 片方の耳を下へ傾ける
- 耳から悪臭がする
- 耳垢が増える
かかりやすい犬種
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- コッカー・スパニエル
- フレンチブルドッグ
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- プードル
- トイ・プードル
内耳炎について
中耳のさらに奥にある内耳が炎症を引き起こす状態です。内耳炎は外耳炎や中耳炎になった段階で適切な治療を行うことで防ぐことができます。頭を傾けるしぐさや眼が揺れていたり、旋回、歩行がおかしくなる、平衡感覚がないなどの症状に気が付いたらすぐに当院へご相談ください。
内耳の病気・難聴
犬は人間と同様に先天的な難聴の疾患があります。多くは遺伝が関係しています。細菌やウイルス、真菌、免疫性疾患などが平衡感覚や張力を失う原因となります。
外傷によるダメージ
内耳がダメージを受けた場合、一時的もしくは永続的に耳が聞こえなくなることがあります。
加齢
犬も人間と同じように年を取るにつれて耳が聞こえづらくなります。加齢により聴力が失われた場合、中耳インプラントという治療法が用いられることがあります。
騒音性聴覚障害
銃など狩猟の際の騒音など大きな音による耳のダメージで難聴が起こります。この場合、治療法は特になく、耳に保護具をあてることが推奨されています。
中耳炎について
中耳炎は外耳炎と似ているため見過ごされることが多い病気です。犬は人間と異なり、外耳炎が進行して中耳炎を発症するので症状としては外耳炎とほぼ変わりません。中耳炎が進行すると片方の耳が、別の耳よりも低く首をかしげている状態の捻転斜頸や、顔面神経麻痺、ホルネル症候群などの症状が現れる場合があります。オトスコープとよばれる内視鏡で鼓膜を観察することで、中耳炎と診断することが可能です。必要なケースでは鼓膜切開をおこない中耳を洗浄するなどの治療が行われます。
中耳炎ではこのような症状があります
- 外耳炎がなかなか治らない
- 耳垂れが多い
- 外耳炎の再発を繰り返す
- 頭を横に振るしぐさが増えた
さらに進行すると…
- 耳を痛がるしぐさをする
- あくびすると痛がる
- 音への反応が鈍い
- 頭を傾けている
- 唇が垂れている
- 瞳孔異常
中耳炎にかかりやすい犬種
- フレンチブルドッグ
- コッカー・スパニエル
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- 柴犬
- シー・ズー
- トイ・プードル
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの場合
多くの犬種では外耳炎から中耳炎を発症しますが、キャバリア種は人の中耳炎と同じく耳管から中耳炎を発症します。症状は難聴や耳をひっかく、叫ぶ、頭を振る、過剰・異常なあくび、顔面下垂など様々です。鼓膜切開や中耳洗浄で治療を行います。
フレンチブルドッグの場合
フレンチブルドッグは、水平耳道がとても狭い構造をしているので、食事のアレルギーや環境の変化などで水平耳道が閉塞してしまうことが多く、中耳炎になっても鼓膜切開や中耳洗浄が行えないことがあります。その場合は、外科手術が必要となります。フレンチブルドッグの飼い主様は、日々の行動や症状、耳の状態をよく観察して、気になる異変があればすぐに当院にご相談にいらしてください。
耳ダニ感染症(耳疥癬)とは
ミミヒゼンダニという種類のダニが耳道に感染する病気です。犬、猫、フェレット、キツネ、タヌキ、時には人にも感染します。感染すると激しい痛みが現れます。感染するとコーヒーかすのような耳垢が見られるようになります。耳ダニ感染症がきっかけとなり、真菌性外耳胃炎や耳血腫を発症する恐れがあります。診察では顕微鏡や音スコープを用いて耳垢の中にダニや虫卵がいないか観察していきます。
耳ダニ感染症(耳疥癬)ではこのような症状があります
- 耳を掻くしぐさをよくする
- 耳道にコーヒーかすのような耳垢がある
- 他の犬や猫に接触した後に耳をかゆがるしぐさが見られる
耳血種とは
ウスイ軟骨で支えられている耳介に血液がたまっている状態です。見た目に耳がパンパンに張れているのが特徴です。発症する原因はまだわかっていないのですが、物理的な刺激や免疫学的背景が考えられています。耳介の表と裏を縫い合わせるマットレス縫合やチューブを入れて排液をする治療、ステロイドやインターフェロンを注入する治療法が用いられます。早期に治療を行わないと耳介の軟骨がだんだん萎縮しはじめ、くしゃくしゃとした耳介になってしまうので注意が必要です。耳が腫れていると感じたらすぐに当院に診察にお越しください。
耳血種ではこのような症状があります
- 耳介部が腫れている
- 首を傾けている
- 耳をかゆがるしぐさが増える
耳血種がかかりやすい犬種
- ビーグル
- ラブラドール・レトリバー
- ゴールデン・レトリバー
- バセット・ハウンド
耳の腫瘍について
犬の耳にはしばしば腫瘍が見られます。慢性の外耳炎を放置していると、耳垢線が過剰に大きくなったり、耳がかゆくてひっかく刺激で結節状になったり、綿棒による耳の間違ったケアにより腫れていることもあります。悪性腫瘍の場合は摘出手術などの外科的治療を受ける必要があります。内視鏡による切除法が用いられる場合もあります。症状や病理検査の結果をもとに治療法を決定していきます。